アシストに頼らず、減速も拒む。|Checkpoint+ SL 5 × Aeolus RSL 37V x 50Cタイヤという選択
グラベルロードにおける「速さ」の定義は、舗装路のそれとは根本的に異なります。いかに高出力を維持するか、いかに空気の壁を切り裂くか。もちろんそれらも重要ですが、未舗装路という不確定要素の塊を走る時、私のようなメタボおじさんサイクリストが最もげんなりさせられるのは、物理法則に則った「路面による暴力的なまでの減速」です。
特に、最近手に入れたCheckpoint+ SL 5のような「軽量e-グラベル」という特殊なプラットフォームにおいて、限られた「自分と自転車のバッテリー資産」をどこに投資すべきか。その最適解を探る中で、私は一つの確信に至りました。
「ポジティブに加速を創るのではなく、ネガティブな減速を徹底的に排除する」
ホイールとタイヤを一新し、42Cの限界を超えた先に見えた、私のような速く走れないおっさんのための合理的で少し欲張りな「eグラベル足回りセッティング論」を綴ります。

この記事の要点
Checkpoint+ SL 5の足回りを、純正42Cタイヤから50CタイヤとAeolus RSL 37Vへ変更した実走ベースのセッティング考察です。
この記事では、eグラベルバイクにおいて「速くする」よりも「減速させない」ことを重視し、20〜30km/h前後の巡航速度域、24km/hで切れるアシスト、荒れた舗装路や砂利道での減速ロスを踏まえて、軽量ワイドリムと50Cタイヤを選んだ理由を解説しています。
主な結論は、エアロホイールよりも、路面入力を分散できる50Cタイヤと、それを安定して支えるけいりょうワイドリムの組み合わせが、Checkpoint+ SL 5のようなeグラベルでは実走上の速さと疲労軽減に直結しやすいということです。
「ダダダダ……」に削られる心。42Cで見えた限界点

前回の記事(こちら)で、Checkpoint+ SL 5に標準装備のホイールとタイヤ(42C)で走った際の不満について触れました。
低速域では従順です。しかし、少しスピードに乗った状態で荒れた舗装路や砂利セクションへ飛び込むと、状況は一変します。「ダダダダダ……」と連続する高周波の振動が視界を揺らし、指先には微細な衝撃が蓄積し続ける。ラインは定まらず、リアがリムを叩く嫌な感触に何度かヒヤリとさせられ、余裕とともに心まで削られるようでした。
正直に言えば、それは「快感」と呼べる走りではありませんでした。解決策として真っ先に浮かんでいたのは、タイヤを50Cへとボリュームアップし、さらに私の愛車であるRailやPowerflyで絶大な信頼を置いている、ダンパー効果がありリム打ち防止にも有効なクッシュコアインサートを入れること。しかし、これをそのまま実行すれば、足回りは一気に重量増を招いてしまいます。(クッシュコアレビュー記事はこちら)
インサートか、軽さか。TQアシストの先輩 宮崎(早)のアドバイスと即決のRSL 37V
「クッシュコアを入れるなら、まずはホイールを軽くしないと話にならない……」。そう思ってTQアシストの先輩である宮崎(早)に相談したところ、「大宮店にRSL 37V(軽量ワイドリム)のフリー在庫が残ってますよ。しかもあれ、50Cいけますよ。」という魅力的な情報が。その瞬間にRSL 37Vへの換装を即決しました。
標準ホイールから425gも軽量化される手元に届いた超軽量ホイール(前後で1355g)を眺めていると、贅沢な悩みが生まれます。「せっかくのこの軽さと伸びの良さを、インサートの重量で殺してしまうのは勿体ない」と。
舗装路を走っている時の標準装備のホイールは、足を止めた瞬間に速度が死んでいく「伸びのなさ」が顕著でした。対して、このRSL 37Vなら、その軽さそのものが武器になる。もちろん登りでも。そこで、「重厚なインサート」ではなく「軽くてよく進む車輪+50Cタイヤ」という、減速しない足回りを目指すことに決めたのです。
TQアシストについて詳しく知りたい方はこちら
Checkpoint+ SL 5に搭載されているTQモーターは、「パワー」よりも「自然さ」に振った独特のフィーリングが特徴です。 実際の走りや他モデルとの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
巡航の敵は「空気」ではなく「地表」にある
Checkpoint+ SL 5での私の実際の巡航速度域は、概ね20〜30km/hが中心です。この領域において、走行を阻害する支配的な要因は空気抵抗ではありません。路面からの入力による「物理的な減速」です。
鋭い一撃であろうと、細かな連続する振動であろうと、タイヤがいなしきれなかった衝撃エネルギーはすべて車体を上方向へと突き上げます。砂利がバイクを進行方向ではなく上方向へと跳ね上げ、一気に推進力が奪われていくあの不快な感覚。あの停滞こそが、グラベル巡航における最大のロスとなります。
空力を語り、わずかなワット数を削り出す前に、まずは地表から受けるマイナス要素を最小化する。この「減速の拒否」こそが、今回のセッティングにおける絶対的な軸となりました。
アシストが切れる24km/h。その先で「伸びる」足回りを作る
e-bikeだからこそ、1Wのロスを惜しまなければなりません。このバイクのアシストは約24km/hでカットされますが、一方でエアロ効果が顕著な恩恵をもたらし始めるのは35km/h以上の領域。つまり、その中間にある「20〜30km/h」という主戦場では、路面抵抗によるエネルギーロスがすべてを支配します。
燃費の悪い私がこの軽量e-bikeに求めているのは、速度変化に対して常に高いワット数をぶつけ続けるような、燃費の悪い走りではありません。「アシストに頼るけれど、頼りきらない」。再加速のためにモーターや自身の筋力を浪費するのではなく、足を止めてもスッと伸びる、減速しにくい足回りを作る。
そもそもこのバイク、モーター音がほとんどしないし、パッと見では電動アシストに見えないスリムなルックス。それが本当に最高なんです。だからこそ、黒子に徹してくれるアシストの存在を忘れるくらい、自分の脚で慣性を維持して走り続けたい。
これが結果としてペダリングを楽にし、自分と自転車、双方の「バッテリー消耗の回避(燃費の向上)」に繋がる。おじさんサイクリストにとって最も合理的で知的な付き合い方だと感じています。
50Cを支え切る「土台」。Aeolus RSL 37Vの真価
今回、このカスタムの心臓部として選んだのが Aeolus RSL 37V です。純正ホイールから前後で約425gという劇的な軽量化(ペア1,355g)を実現したことは、登坂や再加速において大きな恩恵をもたらしました。
そして、この選択を可能にしている前提として見逃せないのが、Checkpoint+ SL 5がミッドドライブモーター方式を採用している点です。リアハブにモーターを内蔵するeバイクとは異なり、駆動はクランク側で完結するため、ホイールは通常のグラベルバイクと同様に自由に選ぶことができる。
つまりこのバイクは、e-bikeでありながらホイールに一切妥協せず、走りの核となる部分を自分の思想で組み替えられるという、大きなアドバンテージを持っています。
そのうえで、私がこのホイールに求めた真の価値は、その「軽さ」以上に、圧倒的な「リムプロファイル」にあります。
RSL 37Vは、純正ホイールと同じ内幅25mmという非常にワイドなリムを採用しています。昨今のグラベルホイールはフックレス化が進んでいますが、ボントレガーはあえて「フックありのTLR(チューブレスレディ)」を採用しています。これにより、タイヤの選択肢を狭めることなく、50Cのようなワイドタイヤを1.8bar前後の低圧で運用しても、ビードがしっかりと保持されるという絶対的な安心感があります。
こうした低圧セッティングを現実的に扱ううえで、バルブ周りの性能も重要です。私自身はマックオフのビッグボアライトバルブ(レビュー記事はこちら)を使っていますが、50Cクラスのタイヤでも空気をスムーズに送り込めるうえ、シーラントが詰まりにくい構造になっているため、フィールドでの扱いやすさと安心感はかなり高いと感じています。
内幅25mmという広大な土台があることで、50Cタイヤのサイドウォールが垂直に立ち上がり、低圧時特有の「タイヤの腰砕け」を抑制。驚くほどカッチリとした安定感を生み出してくれるのです。37mmのリムハイトも絶妙で、横風を逃がしながら、荒れた路面では適度なしなやかさを発揮します。
まさに、「50Cという巨躯を自由に操るための最強のプラットフォーム」。このホイールなしに、私の提唱する停滞の排除は完結しません。
「ボリューム」がいなす安心感。G-ONE RX PROが変える入力の質
タイヤに選んだのは、シュワルベの G-ONE RX PRO (50C) です。
標準の42Cでは、鋭い衝撃に対してタイヤが局所的に限界まで潰れ、吸収しきれなかったエネルギーがダイレクトに車体を「跳ね」させていました。これこそが推進力を奪う最大の原因です。対して50CのRX PROは、その豊かなエアボリュームによって路面の凹凸を点で終わらせず、タイヤ全体でしなやかに「いなして」くれます。
「50Cなんて太いタイヤ、転がりが重いのでは?」という懸念もあるでしょう。しかし、海外のタイヤテストサイト「Bicycle Rolling Resistance (BRR)」のデータを見れば、その疑念は吹き飛びます。この50Cモデル、低圧運用時でも19.4Wという驚異的な数値を叩き出しているのです。これは世界最速と言われる同社のセミスリック、G-ONE RS(17.4W)にわずか2W差まで肉薄する数字。つまり、このブロックパターンを持ちながら、世界最高峰のレースタイヤと比肩する軽さで転がるということです。
超軽量なケーシングが「地表の暴力」を中和し、独自のトレッドパターンが路面を捉え続ける。42Cでは「ガサッ」と抵抗が出て失速していた砂利の入り口でも、50Cはスピードを保ったまま滑らかに吸い込まれていく。「路面に合わせてタイヤ表面が動き続けている」という感覚。これが、e-bikeのアシストが切れる24km/h前後の速度域での「伸び」を劇的に改善し、自分と自転車のバッテリーを救ってくれるのです。
「停滞」を脱ぎ捨てて。軽量ワイドリム+50Cという最適解
最新のエアロホイールも魅力的ですが、私の脚力とフィールドでは、空力よりも「転がりの軽さ」こそが正義です。今回の「軽量ワイドリム + 50Cタイヤ」の組み合わせは、私と同じ悩みを持つ方に自信を持っておすすめします。
もちろん、脚力に余裕がある方なら、空力を味方にできる最新のグラベルホイール、ZIPP 303 EXPLR(エクスプローラー)なんかを履きこなすのも楽しそうですね、かっこいいですし。しかし、脚力のないおじさんeグラベラーにとっては、今回の私の構成はもっとシンプルで実戦的です。
- 軽量ホイールによる加減速ロスの低減と「伸び」の獲得
- ワイドリムによる50Cタイヤの確かな「支え」
- 大容量タイヤによる衝撃分散と路面追従
これらのメリットは、登坂におけるトラクション向上にも、ダウンヒルでの安定感にも確実に効いてきます。すべては、「減速させないためのシステム」として機能しているのです。
アシストが切れる24km/h前後の領域で、いかにストレスなくスピードを維持できるか。その「停滞の排除」の積み重ねが平均速度を押し上げ、私のようなおじさんのライドをより遠く、より深い場所へと導いてくれるのです。
「速くするより、減速させない。」
今の私にとって、それが最も腑に落ちる、Checkpoint+ SL カスタムの答えです。
余談:理想の先にある、次なる「一手」
一度カスタマイズの快感を知ってしまうと、妄想と浪費の連鎖、それにワクワクは止まりません。足回りが完璧に整った今、次なる焦点として見据えているのは、別の次元から「走りの質」を塗り替えるパーツ。グラベル専用ドロッパーポスト、RockShox Reverb AXS XPLRの導入です。
実はこのバイク、首の持病という事情から、強い意志を持ってフラットハンドル化し、アップライトなポジションを構築しています。ただ、正直に言えば、安全なコースを巡航している際、ドロップハンドルのブラケット位置のような「少し狭くて遠い場所」を身体が本能的に求めてしまう瞬間があるのも事実。そこはまさに直進安定のスイートスポットであり、ペダリングへの没入感を左右する領域。私のような身体的事情がない限り、このバイクのポテンシャルを最大限に引き出す正解は、やはりグラベルドロップバーにあるのだ……と、その完成度の高さゆえに痛感しています。
しかし、今の私が優先すべきは、そうした形状への葛藤よりも、さらに根本的な「身体へのダメージと減速要素の徹底排除」です。
狙っているReverb AXS XPLRの真価は、単なるサドルの昇降にとどまりません。特筆すべきは、「ActiveRide」と呼ばれる機能。全開状態から数ミリ下げただけで、内部のエアスプリングが路面の微振動を吸収するサスペンションとして機能し始めるのです。
ストローク量としては、おそらくごくわずかなものでしょう。しかし、その「小さな遊び」が、50Cのタイヤやホイールでも取りきれなかった高周波の振動を、身体に伝わる直前の最終ラインで食い止めてくれる。足回りを50Cで浮かせ、さらにシートポストでも衝撃を逃がす。これが実現すれば、首への負担を最小限に抑えつつ、重心を自在に操りながら突き進める「究極の減速させないシステム」が完成するはずです。
ハンドル周りに一抹の思慮を残しつつも、まずはこの「動的な解決策」を優先する。機材を愛で、理論を試し、また地表へと繰り出す。Checkpoint+との試行錯誤という名の贅沢な遊びは、どうやらまだまだ終わりそうにありません。
FAQ
Checkpoint+ SL 5に50Cタイヤは有効ですか?
有効です。50Cタイヤはエアボリュームが大きく、荒れた舗装路や砂利道での入力を分散しやすくなります。 42Cタイヤで感じた急な減速や絶え間なく続く振動、ハンドルを取られる感覚を抑えやすく、実走では「減速しにくい」足回りを作りやすくなります。
eグラベルにエアロホイールは必要ですか?
高速巡航を重視する場合は選択肢になりますが、20〜30km/h前後の巡航や荒れた路面を重視する場合は、 エアロ性能よりも軽量性を優先した方が実走に合いやすいと考えています。
Aeolus RSL 37Vを選んだ理由は何ですか?
軽量であることに加え、リム内幅25mmにより50Cクラスのグラベルタイヤを安定して支えられるためです。 軽さによる加速のしやすさと、ワイドリムによる安定感のバランスがCheckpoint+ SL 5の用途に適しています。
クッシュコアなどのインサートは必要ですか?
リム打ち防止や低圧運用の安定性を高める意味では有効です。 ただし軽量性やバイクの反応性を優先する場合は、インサートなしで運用し、必要に応じて追加する方法も有効です。より低圧での走行が可能になります。
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